研修医マッチング結果から見る医師の偏在

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医師臨床研修マッチング結果が10月27日に発表されました。今年の参加者は約1万人。新規研修医が日本中のどこに集まっているのか簡易的に図でまとめました。

大学病院マッチングは明暗が分かれる結果に

大都市圏の大学病院はさらに人気に

 今回フルマッチした16の大学病院の分布は東京9、愛知2、京都2、大阪2、神奈川1となっています。マッチング率90%以上では大都市圏近郊の千葉、静岡、兵庫などがランクインしており、都市部人気がより一層高まっていると言えるでしょう。

 自大学出身者割合も概ね50%以下であることも特徴です。地方医学部で6年間過ごした後に大都市圏にUターンする方が多いのでしょうか。また、主審都道府県とは異なる環境で働きたいという理由で都市部での研修を希望する方もいるでしょう。

明暗が別れた地方大学病院

 大都市圏に人気が集中する一方で地方医学部マッチング率には大きな差が出ています。特にマッチング率40%を下回っている大学病院は相当深刻な状況です。研修医が少ない病院では人気の診療科やプログラムも倍率関係なく自由に選べたりするので多少のメリットはあります。しかしながら、研修医の二次・三次救急当番、当直などの回数が通常より増えてしまったり、同期との情報交換の場が少なくなったりする点はやはりデメリットになるでしょう。

 特にマッチング率だけで見てみると東北地方のマッチング率が明らかに低いことがわかります。旧帝大でもある東北大学も苦戦を強いられているようです。また、マッチング率下位の大学は自校出身者の割合が非常に高く8割超も珍しくありません。地域枠や条件付き奨学金の影響が大いにあるでしょう。

 その中でも鹿児島、奈良県立医科のようにうまく研修医を集めている病院もあります。自治医科大は卒後各出身地域に戻ることが原則なので自校出身者0%にも関わらず、50人も研修医が集まっている点は驚きました。

現役医師の分布は西高東低

令和2(2020)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況(厚生労働省)より引用

 都道府県10万人当たりの医師数は主に東京と西日本が多くなっており、逆に東北地方や東海地方は平均を下回っている状況です。ここに毎年の研修医の数が加算されていくことになるので、地域別の医師数の格差は広がっていくことが予想されます。

1次募集マッチング終了時点での研修医数

 1次募集終了段階の各都道府県の研修医のマッチング総人数を厚生労働省のホームページで見ることができます。先ほどの大学病院のデータと異なり、市中病院も含んだデータになります。こちらも10万人当たりの人数に換算して図にまとめました。

 人口10万人当たりの研修医数は全国平均で7.14人。都道府県別で1番多かったのが京都府(10.15人)、続いて沖縄県(9.76人)、岡山県(9.74人)という結果でした。

 逆に少なかったのは宮崎県(5.19人)、熊本県(5.21人)、山形県(5.30人)、埼玉県(5.35人)、岩手県(5.55人)、群馬県(5.56人)です。1位の京都府とは2倍近い差になります。

 大学病院のマッチング率が低い都道府県が必ずしも研修医が少ないわけではなく、宮城、秋田、鳥取などは全国平均を上回っており、同地域では市中病院に研修医人気が集まっていることが伺えます。

研修医を確保するための「地域枠」にも問題が

 今後も医師が都市部に集中する流れは加速していくことでしょう。研修医にできるだけ地域に残ってもらうことが課題になってきます。

 その方法の1つが地域枠です。大学入学時の前・後期日程とは異なり出身地域受験生が優先して入学できる制度です。東北大・名古屋大を除く旧帝大、一部の私立大学は地域枠を設けていませんが、8割以上の大学が地域枠を設けています。

数字だけでは見えてこない地域枠の問題点

 地域枠の人数が比較的多い国立大学として、旭川医科大学を例に挙げて見てみましょう。今年の医学部医学科募集人数の内訳です。

募集定員 95名

 一般選抜前期 40人
 一般選抜後期 8人
 学校推薦型選抜(道北・道東特別選抜) 10人
 総合型選抜(国際医療人特別選抜)5人
 総合型選抜(北海道特別選抜) 32人

 太字部分がいわゆる地域枠に該当します。95名のうち42名が地域枠というのは思い切りましたね。そのおかげもあってか今年の研修医1次募集では38人の研修医のうち37人が自校出身者となっています。この点は大学側の思惑通りになっているように見えます。

 しかし、地域枠の実情は様々な問題点があるようです。参考になる資料が札幌医科大医学生に向けたアンケート結果です。一部を抜粋して紹介します。

北海道の学力水準を踏まえると仕方がないことかと思いますが、地域枠入試があまりにも低レベルすぎるように感じます。他大学では医学部に到底入ることができる学力ではないと思います。

https://amu-normalization.com/wp-content/uploads/2021/07/questionnaire-survey-results-01.pdf

 学力面で一般入試受験生とやはり差が出てしまうようですね。その他にも地域枠特有の卒後の就職についての縛りがあるようです。

地域枠制度があいまいで、義務年限が初期研修の 2 年間とされているにもかかわらず、後出しで入局を強要してくるパワハラ的なやり方に疑問を持っている。

初期研修を市中病院で行いたい学生はある程度いると思うので、入局しないと市中病院で初期研修ができない暗黙のルールは、ルールとして入学前の宣誓書に明記するか、廃止すべきだと思います。

ポリクリ回ったときに入局を前提に話をされるのはあまり良い気分ではありません。入局する人もいればそうじゃない人もいるということをわかって欲しいです。

https://amu-normalization.com/wp-content/uploads/2021/07/questionnaire-survey-results-01.pdf

 医師の自由な進路を大きく妨げてしまうことは、今後の人生を変えてしまうことにつながります。そのため義務年限が事実上意味をなさなかったり、入局するように過度に圧力をかけるのは問題ですね。

おわりに

 今回は医師の偏在の話から少し話題を広げて地域枠に関する課題まで触れてみました。書きたいことはまだまだありますが、限られた時間でまとまった内容が提供できず残念です。週に1~2回程度の更新を今後も続けていきます。

 マッチングも2次募集があったり、卒業試験、国家試験など6年生にとっては忙しい期間は続くと思います。体調に無理のない範囲で頑張ってください。

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