【症例】40歳女性
【現病歴】
X年1月に右の肩甲骨周囲の持続的なズキズキとした痛みを自覚した。市販の鎮痛剤を内服していたが、それでも夜間眠れないほどの痛みで目が覚めてしまうこともあった。1ヶ月ほど経過をみていたが改善しないためX年3月に近医整形外科を受診し、鎮痛剤(NSAIDs)が継続処方された。その後も症状は改善しなかったため、X年4月に別の整形外科を受診した。四十肩の可能性を指摘され、疼痛緩和目的にカルボカイン、デカドロンを右肩関節に注射を行い疼痛は一時的に緩和した。
血液検査ではWBC 16,000/μl、CRP 4.2mg/dlと上昇しており、炎症反応上昇していることから内科に紹介となった。
【既往歴】特記既往なし。健診の受診歴なし。
【生活歴】喫煙 15本/day(20歳~)、飲酒 缶ビール 500mL/day (20歳~)
肩関節痛は高齢者でよく見かけるけど、比較的若年の方が右肩だけずっと痛がるのは少し引っかかりますね。
持続する肩関節痛と聞くと肩関節周囲炎、関節リウマチなど整形外科疾患がまずは思い浮かびます。他にも膠原病などもありそうですが・・・
ここでの画像がポイントですね。過去の経過と合わせて鑑別を考えてみましょう。
レントゲン画像で診断がわかった方もいるかもしれませんが、胸部単純CT画像を提示します。
診断:原発性肺癌(Pancoast腫瘍)
肩が痛いだけという症状でも、大きな病気が隠れていることがあるんですね
片側の肩・上肢の頑固な痛み・痺れ感,手内筋の萎縮,Horner症候群などを認めた場合には胸部レントゲンで肩関節の評価とともに、今回のように胸部の評価もあわせて行いましょう。本症例では、右肩の痛み以外の症状が乏しくなかなか追加の検査に移行しなかったのが、早期発見できなかった要因です。女性で被爆リスクがあるとはいえ、レントゲンだけでも撮っていればもう少し早く診断できていたでしょう。
ただの肩こりと思わずに「夜中に眠れないほどの痛み」「一方だけがひどく痛む」などの細かな症状を初診時に聞き漏らさずに聴取することが大切です。
外来で見かけるであろう症例を学生・研修医の方向けに月1ペースで紹介していきます。今後の更新をお待ち下さい。
コメント